【猫哲学101】2007/01/05


■石油文明な日々。


 バカ猫が眠っている。

 真冬だというのに丸くもならず、どでーっと四肢を投げ出して眠れる
のはホットカーペットのおかげである。その横で私も気持ちよくだらだ
らとしている。

 すべては石油のおかげである。正確には、石油によって作り出される
電気のおかげである。関西電力は「電力の半分は原子力でつくられてい
ます」と言うけれど、その原発の施設を維持するための電力は石油火力
発電所でつくられている。

 何もかも石油のおかげである。天然ガスのおかげでもあるのだが、そ
れも石油の一種として話を進める。なぜそれでいいのかは、せんぶ読ん
でいただければわかるしかけになっている。

 というわけで、今回のテーマは石油文明についてである。文明論とい
のも哲学の主要なテーマだもんね。

 現代文明は、石油がなければにっちもさっちもいかない状態になって
いる。電力、交通、通信、生産、家庭生活、みんなそう。食料だって、
ハウス栽培の野菜果物は「石油の塊」と呼ばれたりする。たった一種類
の鉱物資源にこれほど依存するのはかなり危険な話だと思うが、いまさ
ら私にはどうしようもない。気分の沈む現実だ。

 だいたい、ガソリン1リットルが100円そこそこというのはものす
ごく不自然だ。ペットボトルの水と同額じゃないか。その低価格を維持
するために、産油国である中東の一般市民は貧しいままだ。しかもアメ
リカなどは、イラクに戦争をふっかけてまで石油を奪っている。そのお
こぼれにあずかろうとして、我らが自衛隊もイラク戦争をお手伝いして
いる。私にはとても居心地の悪い時代であり、世界である。

 石油がもっと高価なものであれば、代替エネルギーの開発はもっと進
むだろうし、自動車の燃費はもっと高まるだろう。世界がそうした努力
をしようとしないのは、石油が安いからだ。そして国家や企業が目先の
利益ばかりを追いかけて、理想を求めることに怠惰だからだ。

 私も石油文明の恩恵に預かっている。悔しいことだが、どうしようも
ない。私はふだんから省エネを心がけていて、マイカーは所有していな
いし、移動のほとんどは徒歩である。食べ物を捨てることはしない。同
じ服を破れるまで何年も着ている。だからゴミの量はびっくりするほど
少ない。そんな私であっても、やはり石油浪費文明の一員であることに
変わりはない。バカ猫も同じである。こやつはホットカーペットのスイ
ッチが切れたら文句を言う。

 あのなバカ猫、このホットカーペットは省電力モードになっていて、
6時間たったら自動的に電源が切れるのだよ。私のせいじゃない。くや
しかったら自分でスイッチを入れろ。ほれ、これがスイッチな。

 と教えてやったのに、バカ猫あいかわらず私をつつきまわす。もう、
私はホットカーペットのスイッチかよ。

 かなり話がそれたな。石油文明の話だった。

 ここまではあたりまえのことばっかりを書いてきたので、かなり退屈
だったでしょう。しかし私がこの種の話を書くということは、あっと驚
く展開になっていくのでどうぞご期待ください。

 さて石油とはいったい何なのか、どうして出来たものなのか、疑問に
思ったことはないですか? 燃えるし、黒いし。自然界にある他の黒い
液体なんて、イカのスミくらいなもんじゃないか? 私はとても不思議
に思う。この物質、いったいどこからやってきたのだろうか。

 このことは、本当は誰にもわからない。学説に従って石油を創り出し
た人がどこにもいないからだ。学者さんは、大昔に海洋生物の死体が海
底に溜まり、やがて地層の高温高圧を受けて変化したものだという。し
かしどんな生物の死体なのかはわからないし、そんな高温高圧を実験室
でつくって石油ができるものなのかどうか、やってみた人がいないので
よくわからない。

 それに、いま掘り出されているだけでみても、石油の量というのが半
端なものじゃない。その原料となった生物の大量四肢累々となれば、い
ったいどんな量なのかはさらに想像できない。

 だいたい海洋生物の死体というけれど、そんな有機物は別の生物がお
いしくいただいてしまうのが自然の摂理である。じっさいに現代の深海
探査映像を見てみると、降り積もる有機物は大小さまざまな植物、小動
物、バクテリアなどが食べてしまい、海底は砂地が露出している。死体
なんてどこにもない。映画『タイタニック』を観た人ならわかるでしょ
う。海底とはあんなもんです。

 石油は生物起源? ホンマかいな。私はずっと疑っている。

 生物起源ではなく鉱物起源だという人も多くいる。意外なほど多いの
だよ。特にヨーロッパでは大量の論文が書かれているけど、ほとんどの
日本人は知らないのかな。

 鉱物起源の立場をとる人たちの主張とはおおむねこんな感じだ。

 マグマの中には大量の炭素が含まれている。この炭素がマグマの超高
温・高圧、しかも低酸素の環境下でメタンなどの気体に変化し、地中を
上昇していく。上昇の過程で表層の地層に冷やされ、複雑な炭素化合物
となって地層に溜まったのが石油である。ついでに、気体のままで安定
したのが天然ガスである。

 私は、こっちのほうに説得力を感じるけどなあ。

 しかしこの説は、恐るべき破壊力を秘めている。もしもそれが本当な
ら、石油はほぼ無尽蔵に存在し、今この瞬間にも生成されていることに
なる。しかも原理的には、地球上のどこでも穴さえ掘れば石油が出てく
ることになる。

 やたらめでたい話であるが、これは石油が希少資源であるということ
を口実にして世界支配をしている連中にはとても都合が悪い。アメリカ
なんか自国でも石油が採れるのに中東で人殺しをやって石油を確保しよ
うとしているが、これは自分とこのは大事においといて先に中東の石油
を使っちまおうといういやしい心の顕れだ。ところが石油なんか世界中
どこにでもなんぼでもあるさという話になると、自分たちのやっている
暴虐の説明がつかなくなる。ついでにアメリカの武器商人たちの、儲け
のネタが消えてしまう。

 それにもうひとつ、原子力開発なんかをやっている連中の自己正当化
の根拠が、なくなってしまう。

 そんなことになってはまずいので、石油生物起源説は疑ってはいけな
いことになっているのだが、さて生物起源と鉱物起源、どちらが正しい
のだろうか。

 私が調べてみたところによると、どうやら鉱物起源説が正しいらしい
のだ。その根拠を以下に示してみよう。

 話が飛ぶようだけど、ベトナムが石油輸出国だということを知ってま
すかニャ。とても意外でしょう。そんなこと、ほとんどの人が知らない
んじゃないかな。

 ベトナム戦争後、ともかくベトナム和平というものが成立し、西側の
諸国はご親切にもベトナム復興に協力しましょうとて、大規模な調査団
をベトナムに送り、ベトナム各地の資源分布などを調べあげた。その報
告には「石油は出ません」ということも書かれていた。

 その後で旧ソ連の調査団がやってきた。そして彼らは言った。「石油
が出ますよ。掘ってあげましょうか」

 そして旧ソ連の熟練油田技術者がベトナムへやってきた。彼らが掘っ
た井戸からは石油が出た。それでベトナムは今でも産油国なのだ。

 不思議なのは旧ソ連である。彼らはいったいどんな魔法を使ったのだ
ろうか。ここに秘密が隠されているんだけど、私は書いちゃうもんね。

 旧ソ連、現在のロシア共和国は世界一の産油国である。この事実にも
気がついていない人が多いだろう。ロシアは2003年にサウジアラビ
アを抜いて産油量のトップに立ち、それ以来ずっと世界一である。特に
一昨年末からは、アメリカの下らねえ連中が石油をデリバティブ投機の
ターゲットにしたために、中東の石油が値上がりし、安いロシア石油に
人気が集まった。一時は世界の需要の半分をロシアがまかなっていたこ
ともある。

 ロシアのどこにそんな油田があるのだろうか。バクー、カスピ海では
ない。それならばアゼルバイジャンやカザフスタンが大産油国になるは
ずだ。ここが秘密なのである。だってそんな戦略情報を、誰が正直に発
表するかよ。なんたってKGB出身のプーチンさんが大統領の国だもん
ね。

 1970年代、旧ソ連はKolaSG−3という名の実験井戸を極秘
に掘っていた。その穴は、最終的には地下1万2000メートルを超え
る深さまで掘り進められた。そして石油が出た。それ以来、ロシア国内
では300以上の油井から石油が採取されている。彼らはそれを「超深
度油井」という。

 深く掘ればどこでも石油が出る。それがロシアの常識なのだ。ただし
深く掘るには資金も技術もいる。ロシアはそれを持っている。ベトナム
はその技術を提供されたのだ。

 ロシアはこの事実を秘密にしている。だってせっかく掘った井戸だも
のね、永遠に石油を商品として売り続けたいでしょ。各国がこれに気付
いて自前の井戸を掘ったら、商品価値が下がるじゃん。

 アメリカも気付いている。しかし世界がこれを知ったら、中東支配=
石油支配=米英世界支配という構図が成り立たない。だから知らないふ
りをしている。たとえば日本が自前のエネルギー資源を持ったと考えて
みたらいい。世界の勢力地図が激変しますがな。

 日本の上層部も、多分これを知っている。でもやっぱり知らないふり
をしている。連中はアメリカの下僕だもんね。実は北海道沖、三陸沖、
四国沖、九州沖など日本列島を取り巻く大陸棚には大量の天然ガス資源
が眠っていることが知られているが※、政府はそれを開発しようとしな
いし、ないことにしている。そしてはるばるボルネオまで天然ガスを買
いに行っている。そうしておいて、日本はエネルギー資源の少ない国家
だから、貿易立国ですなどと言う。

(※大陸棚天然ガスという)

 連中がどういう了見なのかは知らないが、何か隠された事情でもある
んだろう。というか、日本が資源自給できる強い国家になっては上の誰
かの都合が悪いのだろうよ。支配とは、まあ、そのようなのものだ。

 私が学生だった頃、石油は1980年代に枯渇するだろうといわれて
いた。1984年には石油パニックも起きた。でも現在のところ、石油
が枯渇する兆候はみられない。それらのデマは、アメリカの石油メジャ
ーが石油価格を操作して大儲けするための陰謀だった。この種のヨタ話
を主張した科学財団の名前を「ローマクラブ」という。ロックフェラー
100%出資のおかかえ財団である。

 ローマクラブは、今でも石油がそのうち枯渇するという論説を流して
いる。「ピークオイル」という名前でその論は呼ばれている。アメリカ
のネオコンは、これを根拠にしてイラクを支配しようとした。イランも
狙われている。アフガニスタンだって、カスピ海の石油をインド洋にま
で送るパイプラインの通り道だから狙われたのだ。そのパイプラインの
設計図はもう完了している。パイプラインを建設する会社もすでに決ま
っている。ユノカルという会社だ。覚えておくといいよ。

 それで話を元に戻すけど、石油生物起源説というのは、石油が希少資
源であることを印象づけるとても都合のいい学説なのだ。いつか枯渇す
るとみんなに信じさせることができる。逆に、鉱物起源説をとると石油
は半永久的に枯渇しないということになる。これでは金儲けのネタにな
らない。戦争の口実にもならない。どこかの誰かさんにとっては不都合
きわまりないだろう。

 科学の学説というのは、いつもこうした政治的なバイアスにさらされ
ている。単純に信じてはいけないよ。猫哲学者はひねくれた野郎だから
定説さえも疑ってかかるのだが、みなさんはどうですか。

 現代は石油文明の時代である。石油がいつか必ず枯渇すると信じなが
ら、人々は水よりも安い値段でそれを使っている。なんかヘンである。

 私が省資源を心がけているのは、人間が地球を汚しすぎるからで、石
油がなくなるからではない。いくらたくさんあるからといって、いくら
でも使っていいというものではない。人にはたしなみというものが必要
である。たしなみを身につけた文明は美しいし、ついでに地球も美しく
なるだろう。でも現代文明は、その反対の方向に走っているような気が
するな。

 さて、石油を道具にして世界支配を狙う邪悪な連中は、石油が無尽蔵
にあることにも気付いているようだ。そして世界支配のネタに使えない
のなら、石油そのものが使えなくなるような理屈を考え始めた。またし
てもローマクラブのご登場だ。彼らは、石油を燃やしてはいけないとい
う論説を広め始めたのである。どんな話かって?

 地球温暖化というヨタ話である。

 ♪〜ちゃんちゃん。

 さて、今回のお話はどこまで本当なのか。疑われる方は、一度ご自分
で調べてごらんになるとよい。きっとびっくりされるだろう。ちょっと
本を読んだり統計を調べたりすればわかることだ。そして文明観を根こ
そぎひっくり返されることになれば、筆者の本懐である。

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「日本は力なんか持たないほうがいいのよ」

 と例の超美女は、私よりもさらにひねくれたことを言い出した。

「今の上の連中に力なんか持たせてごらんなさい。また大東亜共栄圏だ
聖戦だってやり出すから。外国には迷惑だわ」

「まったくその通りだと思うが、いつまでもアメリカに支配されている
ってのもなあ…」

「加害者になるよりも被害者でいるほうが気楽だわ」

「…変なものでも食ったか?」

「なによ」

「今日のきみは妙に論理的で、しかも正しい」

「深海で石油の原料になりたい?」

 脅し方までいつもと違う。

「いや、オレは鉱物起源論者なのだ」

 ボコッ! やっぱり殴られた。
                   F−pon

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